この記事の要点

  • 回数券の割引は原価ではなく空き時間の埋まりやすさで決める。埋まりにくい時間帯の回だけ割引を厚くする設計がある
  • 有効期限は無期限にしない。切れる前に案内が届く形にしておかないと、期限切れが不満に変わる
  • エステで契約総額が5万円を超え期間が1か月を超える回数券は、特定商取引法の特定継続的役務提供にあたり、書面交付・クーリングオフ・中途解約への対応が要る
  • 美容室やネイルサロンなど特定継続的役務提供の対象外の業種でも、回数券は資金決済法上の前払式支払手段にあたり、未使用残高が1000万円を超えると財務局への届出と供託が要る
  • 残数の管理は台帳ではなく予約システムやPOSに寄せておくと、解約時の返金計算や残高の把握でつまずかない

回数券を作りたいという相談は、リピートの相談の延長でよく出てきます。

常連のお客様に前払いしてもらえるので、資金繰りの面でも助かる仕組みです。

ただ、割引幅と有効期限の決め方を間違えると、単価を自分で下げているだけの状態になります。

そのうえ回数券には、業種によってはかかってくる法律のルールもあります。

この記事では、回数券の設計の順番と、気をつけておきたい法律の線を分けてまとめます。

回数券の基本の形

回数券は多くの場合、同じメニューを複数回まとめて購入してもらい、1回あたりの単価を単発より下げる形で作られます。

5回券、10回券のように回数を決め、割引率をかけて総額を出す設計が一般的です。

ここに有効期限を組み合わせて、いつまでに使い切るかを決めます。

作り方自体はシンプルですが、割引率と有効期限の決め方で、あとの運用のしやすさが大きく変わります。

割引は原価ではなく空き時間で決める

割引率を決めるとき、材料費や施術時間からの原価計算だけで決めてしまうことがあります。

でも回数券が埋めたいのは、原価ではなく空いている時間です。

平日の午前中など埋まりにくい時間帯だけ使える回数券にして、そこにだけ割引を厚くする。

土日や夕方など混みやすい時間帯は割引を薄くするか、対象から外す。

こういう形にしておくと、もともと埋まっていたはずの時間まで安く売ってしまう事態を避けられます。

全回一律の割引にすると、混雑時間帯の予約まで安売りすることになり、単価が下がった分がそのまま利益から抜けます。

有効期限は無期限にしない

回数券の有効期限を、お客様に気を遣って無期限にしてしまうケースがあります。

一見親切に見えますが、無期限にすると経理上いつまでも負債として残り続け、いつ使われるか分からない状態が続きます。

期限は切ったうえで、切れる前にお客様へ案内が届く仕組みにしておくことが大事です。

期限の1〜2か月前にLINEやSMSで一度知らせが届くようにしておけば、うっかり失効を防げますし、案内自体が来店のきっかけにもなります。

期限切れを黙って迎えさせてしまうと、お客様の側には損をした感覚だけが残ります。

残数の管理は台帳より仕組みに寄せる

回数券の残数を紙の台帳やスタンプカードで管理していると、記入漏れや紛失でお客様との認識がずれることがあります。

予約システムやPOSレジに回数券の残数管理機能があれば、そちらに寄せておくと、残り回数の確認も次回予約の案内も同じ画面で完結します。

個人サロンに要る予約システムの機能については個人サロンに要る予約システムの機能だけにまとめています。

エステの回数券には特定商取引法がかかる

ここからは法律の話です。

エステティックサロンが回数券やコース契約を販売する場合、契約の総額が5万円を超え、かつ契約期間が1か月を超えるものは、特定商取引法の特定継続的役務提供という区分にあたります。

この総額は施術料金だけでなく、入会金や関連する物販、施設利用料まで含めた合計で判定されます。

対象になると、契約時に法律で定められた項目を記載した書面を交付する義務があり、契約から8日間はクーリングオフの対象になります。

8日を過ぎても、契約期間中であればお客様側から中途解約ができ、その際の解約手数料には上限があります。

サービス開始前は2万円、開始後は2万円か残りのサービス代金の10パーセントのどちらか低い方が上限という定めです。

回数券を売り切りで終わらせず、この解約ルールを先に決めて契約書や案内に明記しておくと、実際に解約の申し出があったときに対応で迷いません。

一方で、この特定継続的役務提供の対象業種は法律で指定された7業種に限られていて、美容室やネイルサロン、トリミングサロンなど、エステティック以外の多くの業種は対象に入っていません。

自分の業種が対象かどうかは、消費者庁の特定商取引法ガイドで確認しておくと確実です。

業種を問わずかかる資金決済法の届出ライン

特定継続的役務提供の対象でない業種でも、回数券には別の法律がかかる場合があります。

回数券のように前払いを受け取り、あとで使ってもらう仕組みは、資金決済法上の前払式支払手段にあたります。

自分の店でしか使えない回数券は自家型前払式支払手段という区分になり、3月末か9月末の時点で未使用残高が1000万円を超えたとき、財務局への届出と、未使用残高の半分以上を法務局に供託する義務が生まれます。

個人サロン1店舗の回数券で、この未使用残高に届くことは多くありません。

ただし、複数店舗を展開している場合や、高額なコース券をまとめて発行している場合は、一度未使用残高を計算しておくと安心です。

該当しそうな場合は、税理士や行政書士に実際の数字を見てもらったうえで判断してください。

まとめ

  • 回数券の割引は原価ではなく、埋めたい空き時間に合わせて幅を変える
  • 有効期限は無期限にせず、切れる前に案内が届く仕組みにする
  • 残数管理は台帳ではなく予約システムやPOSに寄せておく
  • エステで契約総額5万円超・期間1か月超の回数券は特定商取引法の特定継続的役務提供にあたり、書面交付・クーリングオフ・中途解約への対応が要る
  • エステ以外の業種でも、回数券は資金決済法の前払式支払手段にあたり、未使用残高が1000万円を超えると届出と供託が要る

回数券は作って終わりの仕組みではなく、割引の設計と法律の線の両方を決めてから売り始めるものです。

不安な点があれば、お問い合わせから相談してください。

よくある質問

回数券の割引は何パーセントにすればいいですか

決まった正解はありません。埋まりにくい時間帯や平日限定の回にだけ割引を厚くし、混みやすい時間帯は割引を薄くするなど、空き状況に合わせて幅を変える設計が扱いやすいです。全回一律の割引だと、混雑時間まで安く売ってしまいます。

回数券の有効期限はどれくらいが目安ですか

業種や来店周期によりますが、無期限にはしないことが大事です。期限を切ったうえで、切れる1〜2か月前にLINEなどで案内が届く仕組みにしておくと、期限切れが不満につながりにくくなります。

回数券に関する法律は美容室にもかかりますか

書面交付やクーリングオフを定める特定商取引法の特定継続的役務提供は、エステティックなど指定された業種が対象で、美容室やネイルサロン自体は対象外です。ただし業種を問わず、前払いを受け取る回数券は資金決済法の対象になり得るため、そちらは別に確認が要ります。

資金決済法の届出はうちの規模でも要りますか

自家型の前払式支払手段は、3月末か9月末時点の未使用残高が1000万円を超えたときに届出と供託の義務が生まれます。個人サロン1店舗でこの残高に届くことは多くありませんが、複数店舗や高額な回数券を扱う場合は一度残高を計算してみる価値があります。

回数券の途中解約や返金はどう決めておけばいいですか

エステで特定継続的役務提供に該当する場合は、中途解約時の手数料に上限があるため法律の枠に沿って決める必要があります。対象外の業種でも、販売前に解約時の返金ルールを決めて契約書や利用案内に明記しておくと、トラブルになったときの対応がぶれません。

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